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第14話 終わりに向かう時間のなかで──今できることを手渡す

母のお見舞いへ。
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毎日病室に通っている家族から、「最近は、どんな問いかけにも“うん”しか返ってこないよ」と聞かされていたので、どんな姿でも受け止めようと心に決め、病室へ向かっています。

前回、いろいろおしゃべりできたことが、今は何よりの救い。
たくさん話しておいてよかったと、あらためて思います。

柔らかいものならまだ食べられると聞いたので、母が大好きだったプリンを手土産にすることにしました。地元では手に入らないような、ちょっと特別なプリンを求めて、スイーツがずらりと並ぶ東京のデパ地下へ。

ずらりと並ぶスイーツを眺めながら、
「元気なうちに、一緒に選んで食べたかったな」と、
そんな思いが込み上げてきて胸の奥が締めつけられました。

失われていく中で、確かにそこにあるもの

「歩けるようになったら、スーパーにプリンを買いに行きたい」そう話していた、あの夏の日。本当に歩き出すんじゃないかと思うほど、ぐんぐん回復していた母。

でも、あのとき進んでいた道を、ゆっくりと引き返していき、今は眠っている時間も増えたと聞いています。

少しずつ、意思がわかりにくくなり、目の前にいるのに、どこか別の場所にいるような──そんな感覚に、さみしさを感じ得ません。

それでも、まだ会いに行ける。
まだ、手渡せる。

だから今回は、遠くに住んでいる私にだから買えた、特別なプリンを届けに行きます。

届かなくなる日が、そう遠くないかもしれないから、今はただ、手渡せることを手渡したいと思います。

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第15話 好きに応える身体──母から私たちへのメッセージ

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