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第10話 生きる力を支えるとは──母に学んだスピリチュアルケア

子連れでの1か月の帰省を終え、久しぶりに自宅へ戻ってきました。
お盆も明けた今週は、たまった家事やメンテナンス、仕事のタスクに追われつつも、「夏休み、まだ遊びに行ってない!」と騒ぐ子どもたちをプールや映画に連れて行く時間も、なんとか確保できました。
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そんな日常の合間にも、ふと立ち止まり、考える時間があります。
母の緩和ケア病棟への転院、余命を知らされたあの日、そして、看取りを迎えるまでの限られた時間──

そのすべてが、私の中で「生きる力をどう支えるか」という問いへとつながっていきました。

スピリチュアル・ケアと向き合った夏

キャリアコンサルタントとして「健康課題とキャリアの両立」に向き合ってきた私にとって、
母の終末期は、その言葉の意味をまったく新しい角度から見つめ直すきっかけになりました。

健康とは、身体だけでなく、心の奥にある“自分らしさ”や“生きる意味”を失わずにいられる状態。その人の根っこにあるものを支えることが、両立支援の根底にあるのだと気づかされたのです。

この夏、母の終末期に直面したことで、これまでどこか他人事だった「スピリチュアル・ケア」や「スピリチュアル・ペイン」「スピリチュアル・ヘルス」という言葉が、ぐっと自分の中に近づいてきました。

「スピリチュアル・ヘルス」とは、心の深い部分にある“生きる意味”や“自分らしさ”を感じられる健康のこと。

かつてWHO(世界保健機関)では、身体的・精神的・社会的という3要素に加えて、このスピリチュアル(霊的・精神的な)側面も、健康の定義に含めるかどうかが検討されていたといいます。

宗教的な誤解を避けるために正式な定義には盛り込まれませんでしたが、今では特に緩和ケアの領域で、その重要性が注目されています。
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「スピリチュアル・ペイン」とは、たとえば生きがいを失う苦しみのこと。

「スピリチュアル・ケア」は、そうした心の痛みに寄り添い、再びその人らしく生きる力を取り戻す支援のことです。

入院中、転院の病院でも、緩和ケア病棟でも、主治医、看護師、リハビリスタッフの方々それぞれが、母の意向を丁寧にくみ取りながらも、無理のない範囲を見極め、病気に幸せを奪われないよう寄り添ってくださいました。

それは単なる医療的な支援ではなく、母が“自分らしくあろうとする力”をそっと支える関わりだったのだと、今は感じています。

キャリア支援とスピリチュアル・ケアの接点

キャリア支援は、働き方を考えるだけの仕事ではありません。その人が「どう生きるか」「何に価値を見出すか」を模索するプロセスに立ち会い、本人の意向に寄り添いながら、ありたい未来を共に考え育む関わりです。

スピリチュアル・ケアとキャリア支援は、“その人らしく生きる”という本質で、深くつながっていることに気づきました。

この夏の経験を通じて、終末期とキャリア支援が交わる場所が、これまでよりもずっとはっきりと見えるようになったのです。

この気づきは、私にとっても支援者としての転機になると感じています。

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第11話 期待と不満の向こうにある、生きようとする力

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