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第4話 ケアする家族はなぜ「第2の患者」になるのか

患者家族は「第2の患者」とよばれ、医療における精神的ケアの対象とされるそうです。

今思えば、主治医が母の病状と余命について説明してくれたときの丁寧な配慮には、家族もケアの対象とする視点が根づいていたのだと思います。

想いと現実のはざまで

6月下旬に母が末期のがんと診断された後、私は「母には以前、最期は自宅で迎えたい」という意向があったと添え、在宅での終末期ケアを視野に入れていることを、医療連携室と主治医に伝えました。

しかしながら、その半月後に主治医から提案されたのは、緩和ケア病棟への転院でした。

訪問医療を活用する選択肢もありましたが、私たち家族の居住地や生活状況を踏まえると、在宅ケアは、母にも家族にも大きな負担になる可能性があるため、緩和ケア病棟で看取りを迎えることが最善だと思うとのことでした。

淡々とした説明ではありましたが、母の身体の状態だけでなく、私たち家族が“持ちこたえられるかどうか”という点まで含めた判断だったのだと、今は思います。

実際、当時の私たちはすでに2度の危篤連絡を受けており、日々張り詰めた状態の中で、心身ともに疲弊していました。母の希望をかなえてあげたいという想いは強く抱いていましたが、それを実現するには“家族の余力”が必要でした。

主治医の提案に感じた“家族へのまなざし”

緩和ケア病棟は限られた受け入れ枠の中で運用されており、すぐに入院できるとは限りません。母と家族の状況をふまえた、負担を最小限にしながら尊厳を守るための選択肢だったのでしょう。

主治医の提案には、医学的な判断だけでなく、家族の心身の負担にも目を向けた、慎重な配慮が込められていたように思います。

医療者の関わりに支えられ

また、お世話になっている医師や看護師の方々は、説明の後に必ず
「わからないことはありますか」「不安は解消されましたか」「気になることがあったら聞いてくださいね」と声をかけ、すぐにはその場を離れず、ゆっくりと返事を待っていてくれました。

母だけでなく、私たち家族のことも丁寧に支え、見守ってくれている──
家族もまた、医療の支えの中にあることを実感しています。


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第5話 今しかできない支え方──家族でつないだ“再会というケア”

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