2024年10月に開催された「第22回日本更年期と加齢のヘルスケア学会学術集会」に、オンラインで参加しました。今回のテーマは「高齢期の“老い”対策を考える~更年期から始まるNext Stageに向けて~」。
更年期を“終わり”ではなく“次のステージの入口”と捉える視点に強く共感しつつ、キャリア支援に携わる立場としても深い学びがありました。
特に印象に残ったのは、「老い」は加齢とともにただ受け入れるものではなく、更年期から予防・準備ができる課題であるという提起です。骨密度、筋力、認知機能、そして社会的役割の変化──すべてが緩やかに変化していく中で、自分らしさや働き方をどう守るか。
人生100年時代の現在、「対策」は医療の中だけで語られるべきものではなく、ライフデザイン全体のテーマであることを改めて実感しました。

特に興味深かったのは、「加齢変化は避けられないが、“老い”には対策できる」という話。骨・筋肉・血管・脳などの“機能的加齢”は、40代からの予防習慣で将来のQOLを大きく左右するとのこと。また、女性ホルモンの変化を契機に、ライフスタイルや医療的ケアを考えることの大切さをあらためて感じました。
特に印象的だったのは、以下の3テーマです。
■ 高齢女性にとっての幸福の条件
前野 マドカ 氏(EVOL 株式会社 代表取締役CEO)
長すぎる老後をどう幸福に生きるかを問い、幸せは“予防医学”と語る前野氏。幸福度は年齢とともにU字を描き、90歳以上の長寿者は幸福度が高いと紹介されました。金や地位による一時的な幸福よりも、安心・健康・心のつながりが持続的な幸福につながると語られました
■ 100 歳になっても自分の足で歩くために知っておいてほしいこと
梶山 寿子 氏(ロコモジャーナリスト/ 大阪経済大学 客員教授)
骨粗しょう症による転倒・骨折が、寝たきりや老老介護のきっかけになる、と語る梶山氏。国内の骨粗しょう症有病者は1,590万人、うち女性は1,180万人と約74%を占め、特に70代では3人に1人、80代では2人に1人が該当。にもかかわらず、治療を受けているのは3割程度にとどまるとのこと。
大腿骨骨折の多くは、住み慣れた自宅内での転倒(8割は立った高さからの転倒)が原因。また、術後の死亡率は10%と高いなどの実態を紹介。検査率が低い現状への警鐘と、40代以降の運動・栄養・検診の重要性を強調しており、人生後半の健康づくりへの意識を高める内容でした。
■ 自分の望む老後に向けて更年期から準備すべきこと
清田真由美 氏(医療法人社団清心会 春日クリニック 院長)
内科勤務時代、寝たきりの8割が女性だったことに衝撃を受け、更年期女性のケアに30年携わってきた清田氏。外来の多くは、高齢の親を介護する50代女性とのこと
最期は一人になる女性も多く、老後資金の少なさや住まいの不安が課題と指摘。高齢の親を介護しながら働く50代女性は、心身の不調と老後への不安が複雑に絡みます。
理想的な在宅医療は、訪問診療・看護・介護、デイサービスなどが連携して支える体制。鍵の管理やバリアフリー、緊急コールの仕組み、信頼できる後見人の存在も重要。元気なうちの住み替えが安心につながるとの具体的な提案が印象的でした。

キャリア支援の立場からも、「働き続けながら老いに備える」視点は重要です。健康・介護・経済の課題に備える支援こそ、人生100年時代に求められる“キャリア支援のNext Stage”と感じました。
「更年期からのキャリア支援」においても、この「老いの予防」「次のステージへの備え」という視点は欠かせないものになると思います。
単に不調を乗り越えるのではなく、「これからの人生をどう設計するか」を共に考えられる支援者でありたい――そんな思いを、改めて胸に刻んだ1日となりました。