「女性は管理職を望まないから」──その言葉を、何度聞いてきたでしょうか。
けれど、それは“本人の意思”というより、“環境の制約”ではないか。
──そんな視点を裏付ける調査結果が、ニッセイ基礎研究所から発表されています。
同調査では、大企業で働く45歳以上の女性のうち、現在「管理職を希望する」と答えたのはわずか1割。一見、昇進意欲が低いように見えますが、企業や家庭の支援体制が整えば、希望者は約4人に1人まで増えるという結果です。
これは「意欲がない」のではなく、「今の環境では難しい」と判断している女性が多いことを物語っています。

加えて、見過ごされがちなのが、更年期をはじめとする女性特有の不調です。
大塚製薬が実施した調査(2021年)では、更年期症状を理由に「昇進を辞退したことがある」女性が16%、「辞退を検討した」が24%、あわせて40%の女性が更年期により昇進に迷いや諦めを経験していることがわかっています。
これは「意欲がない」のではなく、「無理をして続けられる自信がない」状況に追い込まれているということ。
責任ある立場で体調を崩すことへの不安、周囲の理解不足、柔軟な働き方ができない現実─こうした要素が、女性たちにキャリアの“選択”ではなく“断念”を強いているのです。
企業や、企業内のキャリア支援に携わる者がすべきことは、「本人のやる気を引き出す」ことだだけではなく、安心して挑戦できる土壌を整えること。
更年期を含む健康課題への理解と支援は、管理職登用の“隠れた鍵”かもしれません。
出典
大塚製薬(2021年)「働く女性の健康意識調査」
https://www.otsuka.co.jp/woman_healthcare_project/report/working_woman_2021.html
ニッセイ基礎研究所(2023年)「企業や家庭の状況が変われば、管理職を希望する中高年女性は「4人に1人」まで増える」
https://www.nli-research.co.jp/files/topics/77866_ext_18_0.pdf?site=nli