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経営リスクとしての「介護問題」─人事が今できる両立支援とは

超高齢社会の中、家族の介護を担いながら働く人は確実に増えています。企業にとっては、業務の担い手が突如離職したり、パフォーマンスが低下したりするリスクが高まり、「個人の家庭の問題」として見過ごすことができなくなってきました。

先日オンラインで視聴した「企業における仕事と介護の両立支援セミナー ~経営視点で見る実践事例とその重要性~」では、まさにその現状と向き合い、経営視点からの支援の重要性が語られていました。

印象的だったのは、「両立支援は“福祉的配慮”ではなく、“人材確保の戦略”である」という言葉です。介護が理由の離職は、現時点でも年間約10万人(総務省調査)に上り、特に40~50代の中核人材に集中しています。この層の離職は企業にとって大きな損失です。対応が遅れれば、採用・育成コストや業務の属人化リスクが顕在化します。

基調講演では、株式会社ワーク・ライフバランスの小室淑恵さんが登壇。生産年齢人口が減少する今、企業が業績とエンゲージメントを高めていくためには、柔軟な人材マネジメントと両立支援が不可欠であることが明確に示されました。

介護は突然始まり、5年~10年続くため、仕事と両立できる体制を整えられるよう「企業における介護支援は、介護前の人をどれだけ支援できるか」であるという話が印象的でした。両立できる職場を作るためには、「誰が休んでも回る職場作りをするスキルの習得」や、「介護を隠さず、オープンにして仕事を進め、必要な時には周囲を頼る方法へ移行すること」など具体的なアクションの紹介がありました。

さらに、経済産業省からは「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」厚生労働省からは、4月1日に施行された「育児・介護休業法改正」についての解説もあり、制度と政策の最新動向が一望できる内容でした。

各省庁からは、以下のような調査結果についても紹介がありました。

特に印象的だったのは「現状、介護との両立は企業経営での優先順位が低い→認知されずニーズが表面化しにくい→経営層は、ニーズがないという認識になる」という実態についてです。組織で介護との両立支援に取り組むご担当様からも、同様のお悩みを伺うことが少なくありません。

セミナーでは、各企業独自の取り組みを進めるための具体的なアクションについても紹介がありましたが、「介護は相談してよいテーマ」という空気づくりが、人事としては重要な一歩だと感じています。

私自身も、がんを発症した母の介護を経験し、その間は仕事のペースを一時的に落とさざるを得ませんでした。自分にとっては当然の選択でしたが、企業にとっては、介護を抱えた従業員の変化に寄り添える仕組みがあるかどうかが、働き続けてもらえるかの分かれ道になると実感しています。

最後に、経済産業省が発信している「経営者向けガイドライン」の動画とチラシをご紹介します。経営・人事部門での社内共有資料としても活用しやすい内容です。ぜひ一度ご覧になってみてください。

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