3月26日、経済産業省が主導する「令和6年度フェムテック等サポートサービス実証事業」の最終報告会をオンライン視聴しました。この事業は、フェムテックの活用を通して女性の就業継続を支援し、人材の多様性を高めることで、中長期的な企業価値の向上を図ることを目的としたものです。
令和6年度は13社が採択され、それぞれ独自の切り口で実証が行われました。
報告会では、月経・妊娠・不妊・産後ケア・更年期など、ライフステージごとに生じる健康課題に向き合い、それらが仕事にどのような影響を及ぼすかを可視化し、企業や自治体がどのように支援できるかを探る取り組みが紹介されました。(今年度は1849人が実証に参加し、企業26団体、自治体等17団体、医療機関は2機関で導入)
中でも印象的だったのは、「我慢するものと捉えがちな月経・PMS症状について、客観的なデータ等で自身の症状を認知することで、リテラシー向上や行動変容が促され、積極的なカウンセリングやその他サービス利用、医療機関受診に繋がること」が実証された報告でした。
なぜなら、月経の状態は、他人と比べることが難しく、女性同士でも話題にすることが少ないため、月経時の痛みや出血量等が、一般的なのか異常なのかを知ることはとても難しいからです。
そのため、何らかの不調を抱えていても、6割以上が何の対処もせず我慢していることがわかっています。当然、働き方にも影響が出ているはずなので、自分の状態を認知でき、自分に合った行動を起こせるサービスというのは、画期的だと感じました。

また、更年期の睡眠課題(不眠・中途覚醒など)解決ソリューション事業で、参加者の35%に睡眠課題や働き方の改善が見られ、当事者だけでなく企業にとっても有用性を確認できたという報告も印象的でした。
上記事業は、年代や性別を問わず、睡眠障害を抱える従業員に提供可能なので、「女性だけが対象の施策は、社内で推進しにくい」という懸念をお持ちの企業にとっては導入しやすそうだな感じました。

そして、衝撃を受けたのは、下記報告の中で、医師全体の0.2%程度(1300名)という具体的な数字を知ったことです。更年期障害に深い知見を持つ医師が少ないことは知っていましたが、想定外の少なさでした・・・。
その背景にある事情を、医師と医療従事者のコラボ診療という方法で解決し、スマホで専門医の診察と処方(漢方薬等)を受けられるオンライン診療の実証事業では、コラボ診察でも満足度や症状軽減を実感した人の割合は、さほど変わらないとの成果が報告されており、今後の展開に期待が高まりました。

今回の実証事業者には、フェムテックサービス利用前後で「プレゼンティーズム」や「キャリアに関する考え方」「意識や行動」の変化を測る、共通の評価指標が与えられています。
後日発表された共通指標の結果は、以下です。
サービス利用前後での意識変容
日頃の女性特有の健康課題に対する意識変容が見られた。
サービス利用前後での行動変容
利用が、日頃の女性特有の健康課題に対する取組継続につながっていた。
利用後、適切な情報選択や適切なケアの選択ができるようになった者が増加した。
利用をきっかけに、関連知識の獲得や医療機関における各種治療等を実施する者が増加した。
キャリア等のアウトカムへの効果
女性特有の健康課題によって業務に影響が生じうる場合にも、目標をもって前向きに働くことができるという自信や、健康課題を自己管理しながらキャリアを築いていくイメージを持つことにつながっていた。
サービスの利用により、職場の同僚等への配慮や支援への効果も見られ、特にその効果は男性で高かった。
プレゼンティーズムへの効果
サービスの利用により、プレゼンティーズムの上昇効果が見られた。特にその効果は、若い世代、個別型の健康相談・キャリア相談、症状等の改善のサービスで高かった。
これは「女性の健康課題は個人の問題ではなく、職場全体で支えるべきテーマである」というメッセージが強く伝わってくる結果だと思います。働きながらライフイベントを迎える女性が増える中で、企業や社会がどのように受け止め、伴走できるかは、未来の働き方の質を左右する重要な視点の1つです。
フェムテックを導入することは、単なる“やさしさ”ではなく、“経営戦略”である。そう実感できるような取り組みと成果に、希望と可能性を感じた報告会でした。